東京喰種 全巻

舞台は現代の日本の東京。「喰種」(グール)と呼ばれる人間を捕食する正体不明の生物が社会に潜んでいる世界。普通の大学生である主人公は、喰種に関わるある事件が原因で、人間と喰種の中間の生物「半喰種」となってしまうところから物語はスタートする。人間の感性を持ちながら、喰種として生活する事を強いられた苦しみを感じつつも、今まで駆逐の対象でしかなかった喰種の想いを理解し、人間と喰種が共存できる道を模索していく。

 

主人公はなんの特技も特殊能力もなく、家庭環境も劣悪で、趣味は読書だけといった、暗い主人公であるのだが、そんな主人公が悲劇の中をもがく姿が心苦しくも共感できる。いわゆる元気で野心家なザ少年漫画の主人公ではないところが魅力的である。

 

設定がものすごく細かくて、ただ単に「人を捕食する喰種がいる」というだけではなく、そんな喰種が実際に人間社会にいたらどんな風に社会は対応していくのか、喰種はどんな想いを持って生きていくのかが本当に細かく描かれている。設定が現実的かつ細かい分、現実世界とも妙にリンクする部分があって、「この現実世界にも喰種は本当にいるんじゃないか」と思ってしまうほど。だからこそ、漫画の世界観に没入して物語を楽しむことができる。

 

少しグロテスクな表現が多いので、そういった表現に免疫がある方はどなたにでもハマってもらえる漫画だと思いますが、特に漫画に「絶望感」を求める方におすすめです。一般的なSF漫画やバトル漫画は、主人公がどれだけピンチになっても誰かが助けに来てくれますし、主人公自身のヒロイズムで作品自体に安心があるように感じます。また、登場する敵キャラクターも「強い」「かっこいい」と思うことはあれど、「怖い」と思うことは少ないと思います。一転して、東京喰種では、主人公がピンチの時にはとことんボロボロにされます。主人公が拷問を受けるシーンはもう見てられません。当然誰も助けに来てくれないので、自分で命からがら逃げ出します。敵キャラクターもカッコよさよりも先に「怖さ」を感じます。現実世界で、目の前に猟奇的な殺人鬼が現れたらカッコよさなんか微塵も感じず、きっとただ怖いと思いますよね。その感覚が、この漫画の敵キャラクターにもあるんです。そんな恐怖のどん底のような世界で、ただの根暗な男の子だった主人公がもがき苦しみながら成長し、人間社会と喰種社会を変革させてようと邁進していく様は見ていて苦しくなるのですが、だからこそ応援したくなりますし、共感できる漫画だと思います。